
廬山寺節分の「鬼の法楽」は大勢の人出でにぎわうが、行事は大正末期に開始されたという。なお、修正会などの正月行事に直接結びつかないが、鬼の出現する芸能を伴う例に、京都市紫野やすらい花(四月第二日曜・かつては旧三月十日)があり、仮面をつけない鬼(四体)・シャグマ・太鼓・鉦などの要素が認められる。
また、壬生寺の大念仏狂言(四月二十一日〜二十九日)にも鬼の演目がある。
●近畿南部の追儺●
法隆寺鬼追い(二月三日・西円堂修二会の結願)では太鼓と鉦を徐々に間を打ちつめながら繰り返した後、鬼(黒・父/赤・母/青・子)と毘沙門天がでる。なお、同寺金堂修正会二月七日〜十四日・加持杖の使用は十二日から)では厳析といって加持杖で内陣の堂内や厨子を叩く儀礼がある。興福寺鬼追い(二月三日)と薬師寺鬼追い(四月五日・修二会=花会式の結願)は、ほぼ法隆寺と同様である。
長谷寺ただ神し(二月十四日・修二会の結願)太鼓・法螺貝・鉦乱声の中で鬼(赤・黒・青)がでる。なお、追儺との関連は不明であるが、牛王と虎皮にふれた記事がある(注?)。
五条市念仏寺鬼走リ(一月八日〜十四日修正会の結願)この儀礼は実見していないが、前記『芸能の科学二四』の両氏の報告に詳しい。鬼(父・赤・手斧/母・青・念珠/子・赤・手槌)に貝吹・太鼓打・棒打が加わるという。十四日には後堂で本尊厨子の裏を二本の棒で強打するという。
三重県阿山郡観菩提寺修正会(二月十一日〜十二日・修正会の結願)厄除大餅会式とも。乱声(太鼓・法螺貝・銅鑼・牛王杖・達陀行法があり、野菜で作った鬼面を飾る。
大板市四天王寺どやどや(一月十四日・修正会結願)鬼はでないが、裸の男たちが牛王宝印ノ護符を奪い合う。
●近畿西部の追儺●
兵庫県には鬼が出現する儀礼が多数現存している。詳細は『兵庫県民俗芸能誌』(喜多慶治錦正社昭和五二年)および『神戸の民俗芸能』(神戸市教育委員会 長田・須磨編は昭和五三年、垂水橋は昭和五四年)を参照されたい。
長田神社の追儺式(東京国立文化財研究所提供)

神戸市長田区長田神社追儺式(二月二日〜三日)は、一番太郎鬼・姥鬼・呆助鬼・赤鬼・青鬼・尻くじり鬼・餅割鬼の七鬼がでる。五名の太刀役の少年も活躍する。以下は行事名を列挙するにとどめる。
神戸市須磨区妙法寺鬼踊り(一月三日)
神戸市垂水区押部谷近江寺修正会結順(二月十一日)
神戸市垂水区押部谷性海寺修正会結願の行事(一月十五日、かつては十四日)
神戸市垂水区転法輪寺修正会結願の追義式(一月七日)
神戸市垂水区多聞寺修正会の結願法要作法、追儺式(一月五日)
神戸市垂水区伊川谷太山寺修正会結願法要造儺式(一月七日)
神戸市垂水区名谷明王寺修正法会の結願追儺式(一月四日)
[神戸市須磨区大手町勝福寺修正金結願法要鬼追(一月七日)は最近復活した。]
山陽地方の岡山西大寺会陽(旧暦一月十四日)は大阪四天王寺のどやどや、岩手県黒石寺の蘇民祭と同様修正会の結願にあたり、いわゆる裸祭りとして有名である。
●九州の祭りの鬼●
福岡県太宰府天満宮鬼燻べ(一月七日・もと安楽寺の修正会の結順)では、「鬼じゃ」の掛け声の中、「鬼面使」と「鬼掛」が活躍する。
福岡県久留米市大善寺玉垂宮鬼会(一月七日)で、子供の演ずる「棒シャグマ」は「振
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